前回、主人公の作家は「ローマを舞台」にして小説を書いている、という解釈について書きました。
そうなると、映画「サード・パーソン」中、最大の謎である場面の説明が、ますます困難に感じられるのではないでしょうか?
ホテルでの、メモ用紙と、部屋いっぱいの白バラのシーンですね。
今回は、その点について書いていきます。
ジュリアが書いたメモの裏に、マイケルが電話番号を書く
ジュリアが、NYの高級ホテルで客室係として掃除している最中、携帯に大事な連絡が入り、慌てて部屋の備品であるメモ用紙に記入します。
でも、その紙を置き忘れ、その場を離れてしまう...。
一方、妻のエレインから電話がかかってきたマイケルは、彼女の新しい電話番号を書き留めるために、机の上のメモ用紙を探しますが、おもてに住所が書かれている1枚しかなく、急いで裏に記入します。
そして、そのおもての住所というのは、ジュリアが書いた内容なのです!
マイケルが宿泊しているのは、パリの高級ホテルなので、映画を観ている側は、
「どういうこと?!」
と思うシーンです。
別々の都市で、同時進行している話かと思ったら、唐突な接点があり、そのせいでジュリアの話が急展開します。
ストーリー上、とても重要な「原因」なので、「どうしてこんなことになったのか」が気になる場面となっています。
ニューヨークのホテルで起こった出来事
超常現象「空間移動」が起こるような話ではないことは、みんな分かっています。
また、全く同じような話が、同じ日(メモは2013年9月27日、バラは29日か30日)に、NYとパリの高級ホテルで別々に起こるというのも、違和感がありすぎます。
(メモの日は、ジュリアの弁護士のスマホ画面に、2013年9月27日との表示。マイケルは襟付き黒長袖を着ている日で、別の場面でLINEメッセージを送った時、アンナのスマホに9月27日と表示されています。)
なんと作家は、「自分自身のパリでの経験をもとに、NYを舞台とした話も書いている」とすると、説明がつきます。
(「ローマを舞台にした話」と、「NYを舞台にした話」との関係は、また改めて書きます。)
NYでの作家(マイケル)とアンナの話は、「ジュリアを主人公とする話」と交錯します。
(NYの高級ホテルで)
残り1枚のメモ用紙を、客室係のジュリアが使った。(創作)
↓
マイケルが部屋に帰ってきたので、ジュリアはメモを忘れて、慌てて去った。(創作)
↓
妻からの電話でマイケルがメモ用紙の裏を使った。
↓
アンナがメモを自分の部屋に持ち帰った。(←マイケルが妻に連絡できないようにするため)
↓
ジュリアがメモを取りに戻ったが、もう無かった。(創作)
↓
マイケルから白バラを贈られたアンナが、「もうどうでもいい」とメモを捨てた。
↓
部屋から出て、廊下でジュリアとすれ違いざまに、アンナが挨拶した。(創作)【接点】
↓
その部屋に清掃に入ったジュリアがメモを見つけ、白バラをめちゃくちゃにした。(創作)
(ジュリアがこのようなことをした理由は、また別の機会に...。)
まだ下書き段階のため、ラフな点が残っている
マイケルとアンナの登場するシーンは、作家の経験をもとにした、下書き状態なのだと思います。
それなので、場所がNYのホテルになっていないし、ジュリアとすれ違ったアンナは、フランス語で挨拶しているのではないでしょうか?
(このすれ違う場面は、NYのホテルの廊下となっています。)
3人の手に渡るメモ用紙も、同じ紙ではありません。
ジュリアが使ったメモ用紙には上部に「HOTEL (THE MERCER) AT PRINCE & MERCER」、下部に「NEW YORK」の文字が印刷されています。
マイケルが使ったメモ用紙のおもて上部には、「HOTEL St. Taeque's PARIS」と印刷されています。
番号をメモした側に、印刷はありません。
でも、アンナが部屋に持ち帰ったメモ用紙には、マイケルが番号を書いた側の上部に「HOTEL St. Taeque's PARIS」と印刷されているのです!
ホテルのメモ用紙である点だけが共通していて、「まだ統一されていない状態」ということだと思います。
まず大まかに原稿を書くこと、そしてこの後、作家がどのように修正していくのかについては、映画の中にヒントがたくさんあるので、改めて考察したいと思っています。
今回の謎については、文章が長くなってしまったので、次回に続きます。
(2017年11月22日の記事です。)
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