この数週間、映画「サード・パーソン(Third Person)」(2013年)のことを考えていました。
1つ1つのセリフ、行動、小物にまで、深い意味がある、この映画。
観終わった後も、「何か大事なことを見過ごしているんじゃないか」と、気になって気になって...
ネットには、個人的な見解をまとめられているページが幾つかありますが、どれを読んでも私の疑問は解決しません。
映画の真意を理解したくて、謎解きに挑戦しました。
自分なりに考えた、「つじつまの合う」解釈をまとめていきます。
映画をご覧になった後、もやもやしている方は、ぜひ一緒に考えてみてください!
今回は、映画「サード・パーソン」公式HPにも明記されている謎についてです。
スコットがいるバーの前を、アンナが通る
ローマ滞在中のスコットが、「バー・アメリカーノ」の入り口から外を見ている時、アンナが車で通りかかるという、映画最初の方の場面。
でも、アンナは、作家に会いにパリに来て、空港から街中心部のホテルまで移動している場面のはず。
ホテルの送迎専用車らしいベンツ内で着替えているアンナは、最後の仕上げ中。
時間は、アンナが着替え前に見た腕時計が10時17分ごろ。
スコットがバーに入店した時刻は、TVニュース画面の14時02分。
2都市の間に、そんな時差はありません。
場所も時間も、全く違うはずなのに?!という不可解なシーンとなっています。
このアンナは、小説上の人物
これは、主人公の作家が、自分とアンナとのパリでの経験を、ローマでの出来事として小説に書いているからでは?と考えられます。
作家は、スコットとモニカの話と、アンナと自分との話を、「ローマで同時に進行する話」としているらしいのです。
つまり、このシーンは、アンナが(パリではなく)ローマの高級ホテルへ向かう途中に、スコットのいる庶民的なバーの前を通っている、という「ふたつの話の接点」なのではないでしょうか。
その場合、時間はローマの14時過ぎとなります。
そして、このシーンは同時に、2つの物語のヒロイン同士の比較にもなっています。
手持ちのビニール袋などに、大量の持ち物を詰め込んで運んでいるモニカと、高そうな旅行バッグを、ホテルの従業員に運んでもらうアンナ。
客として入っているバーでさえ、差別的な対応をされているロマ族のモニカと、最高級ホテルで重要な客として扱われているアンナ。
ふたりの服装も、全く違います...。
そんな、第三者から見たら、幸せそうなアンナだけれども、実はそうではありません。
映画で描かれているとおり、アンナは、誰にも言えない秘密に人生を縛られています。
「見かけだけでは本当のことは分からない」ということを暗示しているのではないでしょうか。
ちなみに...リモンチェッロ
「バー・アメリカーノ」でモニカとスコットが飲んでいたリキュール。
おいしそうでしたね。
南イタリアではどこにでもあり、お土産の定番品です。
それを知らなかったスコットは、イタリアの生活・文化への興味が全くない人物として、描かれていました。
バーに来る前、「さっさとイタリアを出たい」と、電話口で話していた会話と見事に一致しています。
モニカとの出会いによって、そんなスコットが変わっていくことで、物語をドラマチックに展開させています。
(2017年11月10日の記事です。)
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