30分弱の時間に、内容がぎゅっと詰まった、この短編映画。
結局どうなったのか、観る側に考えさせるラストとなっています。
私も、気になる点が幾つかありました。
1つは、キノが去った後、「イナーシャとコール中尉の関係がどうなったのか」...
今回は、この点について書いていきます。
(2019年7月末の記事です。🙂)
(image: Clker-Free-Vector-Images)
注意事項
ちなみに、この映画に限らず、「キノの旅」の原作、アニメは、衝撃的な内容を含みます。
キャラクターはかわいらしいのですが、小学生には、おススメできません。
私自身は、弟が高校生の時に原作を貸してくれて、初めてキノを知りました。
そういうこともあって、「高校生ならば、良さが分かるのかな?」と考えたりしています。
でも、「中学生は全員ダメ」とか、「高校生ならば全員OK」という問題でありません。
子供に見せたり読ませる場合には、大人がじっくりと調べて、子供の性質も考慮して、判断してもらいたいと思っています。
「キノの旅」が好きだからこそ、書かせてもらいました。😌
(image: CDD20)
ここから本題です
イナーシャは、キノと会ったことで、
親にも内緒にしていたローグとの秘密を語り、
「彼に贈り物を渡したい」という願いを託しました。
コール中尉は、キノが来たことで、
ローグ宛ての心のこもった贈り物を受け取り、
「誰にも言えなくて苦しんでいた秘密」を、キノに打ち明けました。
この後、ふたりの状況に、変化はあったのでしょうか!
「映画と原作のみ」から、推測していきます。
(原作は「キノの旅 Ⅴ」の第10話です。)
コール中尉が、ローグに代わって文通を続けた理由
そもそも、どうしてこのような状況になっていたのでしょうか?
原作では、キノと話している時に、コール中尉自身が、
「なんで返事なんて出してしまったんだ!」
と叫んでいます。
ローグが亡くなった後、彼になりすまして、イナーシャに手紙の返事を書き始めたことを、後悔しているのです。
映画では、「手紙を出さないでくれと書くべきだったんだ」と、言っています。
1回だけ、ローグからとして、「『文通をやめたい』と書けばよかった」、そうすれば、「苦しみながら手紙を書き続けなくて済んだ」ということですね。
でも、それができなかったコール中尉。
本人さえもはっきりとは分かっていない理由で、手紙を出し続けずにはいられなかったのです。
彼は、ローグが生きていたときから、ふたりの励まし合う関係を知っていたとのこと。
そして、イナーシャに惹かれ、「彼女に元気になってもらいたい」という気持ちが強くなったようです。
(original photo: Free-Photos)
原作では、「特別開拓団」の秘密について、「何より、彼女の明日のため」と言っています。
映画では、「何より、あの子を助けるために」。
彼の気持ちは、身近な所にいたローグではなく、イナーシャの方に向いているのです。😮
ローグへの手紙を通して偶然知った、ひたむきな彼女を支えたくて、文通を続けたということでしょう。
もし、ローグからの手紙が来なくなったら、イナーシャは、つらい治療を続ける気力を失ってしまうかもしれない状況でしたから。
また、彼女に「心配をかけたくない」、「傷つけたくない」という気持ちも、あったのかもしれません。
いきなりプッツリと返事をやめると、イナーシャは、ローグの身を案じて、「なんとかしてあげないと!!」と行動を起こす可能性さえあります。
人一倍、気遣いも行動力もある女の子として描かれているので。
キノのような旅人に様子を見に行ってもらうとか...
それが無理なら、別の開拓団と連絡を取ろうとするとか...
イナーシャが苦心することになるのは、当然の展開では?
そして、真実を知り、傷つく可能性が高いのです。
それを防ごうとして続けた、偽りの文通だったのだと考えられます。
ちなみに、「特別開拓団」に関する秘密が、シティの一般人にばれないように、というような意図は、文通に関しては無かったようです。
(もしそれが理由なら、上記の「なんで…」という発言や苦悩は無いので。)
一方、キノに対して、謝りながらも、命を奪おうとしたのは、この「組織的な秘密」を守るためなのでしょう。😞
(傷つけるような真実を、イナーシャに伝えないように、キノを説得することは可能ですから。)
手紙を書いた人・その手紙の内容
キノがこの国を去ってから、イナーシャの元に届いた手紙。
原作では、「10日後」となっています。
これを書いたのは誰なのでしょうか。
(image: geralt)
原作だけでは、「もしかしたらキノ?」という可能性もあります。
映画では、手紙の冒頭はイナーシャの声で、途中からコール中尉の声で読まれていました。
コール中尉が書いた、ということでしょう。
そもそも、コール中尉以外の誰も、差出人ローグ(または未記入)の手紙を、シティのイナーシャに届ける方法などないのです。
あの対峙の後、「コール中尉も生きている」ことが分かります。😯
(この件に関しては、こちらに詳しく書きました。 ↓)
そして、私が1番気になったのは、この手紙の内容なんです。
映画で、イナーシャは、手紙を読んで、声を上げるほど泣いてしまいました。
それなので、「長い話をしよう…」の続きに、「悲しいことが書かれていたのではないか??」と感じたのです。
原作では、この手紙を読んで、イナーシャは「泣き出しそうになって」と書かれています。
(泣いてはいない。)
また、手紙は、「長い話をしよう」で終わっていて、「長い話をしよう…」のように、続きを暗示するような余韻はありません。
手紙には、
「贈り物に対するお礼」
「元気になって、開拓村に来て」
「(会った時に)たくさん話そう」
の内容を伝える3文だけ、書かれていたようなのです。
(原作で)イナーシャが泣きそうになったのは、贈り物を渡せたことへの喜びと、「ローグに会いたい!」という気持ちのためなのかもしれません。
気持ちが高ぶって、映画での反応のように、「泣いてしまう」ということもあるのかな?とも思われます。
(↓ この「泣いてしまった理由」については、こちらにもう少し書きました。)
文通のゆくえ
結局、この手紙の内容では、「今まで通り、文通を続けること」に、イナーシャは何の疑問も持たないことになります。
原作では、「この後も文通は続いた」と解釈するのが普通でしょう。
映画では、イナーシャの大泣きの様子から、手紙に続きがあり、文通は終わったという可能性も考えられるのですが...
ではもし、この手紙に、そんな続きがあったとしたら、どのような内容になるのでしょうか?
手紙の続き ~文通を終わらせる方法~
ローグ宛ての贈り物に対してお礼を書いているので、ローグとして、コール中尉が書いたことになります。
そして、文通を終わらせるために書かれた、イナーシャにとっては悲しい内容のはずです。
(original photo: Free-Photos)
この場合、「好きな人ができた」というような、「嘘の告白」が1番有効かもしれません。
「同じ開拓者同士で、相手も自分を想ってくれている」とか...
気を落としたイナーシャが、治療をやめたりしないように、
「これからも君の幸せを願っている。僕たちのことも見守ってね。」
という言葉を添えて。
ローグを、イナーシャから「気にされないような相手にする」しかないと思うのです。
この内容の後、「しばらく手紙を書けない(←文通をやめることを暗示)」と言われれば、ローグからの返事を、これまで通り待ち焦がれることもないでしょうし。
そして、独りよがりではないイナーシャなので、今後は「友達として」ローグに再会する日を目指して、闘病してくれるんじゃないか...
そんなコール中尉の希望も、込められる内容だと思います。
キノがもたらした変化
たとえ文通を続けたとしても、それは、これまでとは違うやり方になりそうです。
その兆しが、最後のお礼の手紙に表れています。
上記の短い3文の内容。
これは、「コール中尉の気持ち」とも読めるのです。
あえて差出人が誰かは明かさずに、初めて「自分からの手紙」を書いたのではないかな、と感じました。
いかにもローグからのように見せかけるための、「子供らしい想像を膨らませた内容」を、あえて記さないことにしたかのようです。
もちろんイナーシャは、お礼の手紙も、ローグの言葉だと信じています。
(今までと同じように届いているし、ローグではないと書かれてもいないので。)
そして、コール中尉も、もちろん、そう受け取られることを望んでいるのです。
この後も、相手が代わったことには気付かれないように配慮しつつ、「自分の気持ちを伝えていく」ということを暗示しているのではないでしょうか。
そんな、ほのかな希望のようなものが感じられました。
(image: ractapopulous)
秘密を知ったキノの、「これ(贈り物)はあなた宛てです」という言葉。
ローグのために作られた物だけれど、受け取るのはコール中尉(あなた)だと断言していました。
かつてはローグだったけれど、「その後はずっと、あなたがイナーシャを支えている」という意味ですよね。
キノとの出会いがきっかけとなり、コール中尉の中で変化が起きたと、最後の手紙は示しているのかもしれません。
(入院中なのに、イナーシャが両親に知られず「文通」を続けられたことについて。↓)
(Amazon プライム・ビデオのページです。)
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