前回書いた通り、かなり内容の濃いストーリーでしたが...
この映画は全体的に、説明の足りないところが多いのも事実です。
これは、大作小説が原作である場合、仕方ないことなのかもしれません。
限られた上映時間内に、ストーリーを納めないといけないので。
「この雰囲気を実写で見たい!」という読者のために作られたと考えれば、納得です。 🙂
(original photo: Maria Orlova)
原作を読んでいない私は、いろいろと不可解に感じつつ、想像で補って観ていました。
バリー殺害方法
最後まではっきりしなかったのは、この部分です!
母親が自身のボーイフレンドであったバリー(ビリー・コノリー)を、一体どうやって殺害したのか、分かりませんでした。
意味深な回想
アストリッドが、あちこち転々とする生活を送る中で、「時々思い出さずにはいられない場面」というのがあるんです。
それが、「殺害の謎と関連するのでは?」と思われるのですが...
映画では、結局何を意味していたのかが、曖昧になっています。
(original photo: pixabay)
《回想されるシーン》
・母とバリーの「恋人としての付き合い」の始まりを象徴する、カフェでのふたりの親しげな朝食風景。
(アストリッドにとっては、「悲劇の始まり」ってこと?😥)
・バリーが怒りながら家に押しかけてきて、窓ガラスを割り、それに対して母が(ナイフか何かで)窓越しに彼の手を切り付けるシーン。
(母がバリーに捨てられた恨みから、仕事関係のデータを消去したのがばれたため争いが始まった... 😯 。母の手段を問わない仕返しの方法に、本性を見た?)
・バリー殺害容疑で警官に連れていかれる母が、「すぐに戻る」とアストリッドに言い残して出て行く、玄関のシーン。
(母と暮らせなくなり、生活がガラリと変わった瞬間だから?😔)
・母がテーブルで、花の咲いたホワイト・オランダーの枝を、牛乳の注がれたグラスに活けるのを、アストリッドが横で見ているシーン。
(花好きな母との幸せな思い出?それとも、殺害と関係あるのか? 🤨)
・「ホワイト・オランダーには強い毒があるのに、なぜ育てるのか」と話す男性の声が聞こえるシーン
(毒があることを、アストリッドも知っていたことを暗示 ?🙁)
・母親がホワイト・オランダーを大量に刈り取っているシーン。
(毒殺に使うため?😨 )
この、「ホワイト・オランダー」という植物が、映画のタイトルになっています。
白い花をつけ、きりっとした樹形は、「白い服を着た美しい母」を象徴しているかのようです。
(強い毒を秘めているところも...!)
この植物が、殺害に使用された、はずだけど・・・
ホワイト・オランダーは、日本では「夾竹桃(キョウチクトウ)」と呼ばれています。
すべての部分(花、葉、枝、根、果実)と、植えている周辺の土壌にまでにも、毒があるそうです。
(original photo: gemeindeblatt86502)
口から摂取することで、これまでにも、人や家畜の死亡例がありました。
牛の場合、体重1キロあたり50ミリグラムの乾燥葉が致死量とのこと。
(wiki「キョウチクトウ」より。)
なので、体重60kgの人でも、乾燥葉3グラムで危ないと考えられます。
かなり強い毒です。 😣
そこで、謎の「この花を牛乳に活けるシーン」は、毒を抽出するためだったのかな・・・とも考えられます。
また、これとは別に、母娘のドライブ中に、「アメリカでは非合法であるDMSOという薬を、メキシコで母が買う」ということを話すシーンがありました。
(でも、その理由の説明は無いまま。😐)
このDMSO自体は毒ではなく、「有機物をよく溶かす、水とよく混和する溶媒」です。
ホワイト・オランダーの毒を、牛乳に溶かすために使った溶媒かも?と考えられます。
でも、どうやったら、そんなあやしい液体を飲ませたりできるでしょうか...
母が、(自分には全く損のない)完全犯罪で、自分を捨てたボーイフレンドを罰するつもりだったはず!と想像するものの...
詳細は謎のままなのでした。
(original photo: iiii iiii)
意外な事実!
なんと、原作のwikiに、次のような内容がありました!👀
(↓)
”breaking into Barry's house and spreading a mixture of DMSO, an arthritis drug, and oleander sap all over the surfaces of Barry's home (the DMSO allows the oleander poison to be absorbed into skin). As a result, Barry dies, ”
訳:(母が)バリーの家に押し入り、関節炎薬DMSOとオランダーの樹液の混合物を、バリーの家中の壁や床などの表面に塗り、その結果、バリーは死亡。というのも、DMSOはオランダーの毒を皮膚に吸収させる働きがあるため。
ちょっと、非現実的な気がしますが・・・ 😳
原作を読まない限り、その他もろもろ、説明不足な点は、はっきりさせられないかもしれません!
その原作とは・・・
映画の原作『扉』(原題:White Oleander《ジャネット・フィッチ Janet Fitch》)は、アメリカで1999年に出版され、ミリオンセラーになった長編小説です。
アストリッドの12歳から20歳までのストーリーが書かれて描かれているそうです。
邦題が大胆に『扉』となっています。
「扉」というのは、「この物語を象徴する存在」なのかもしれません。🙂
映画でも、様々な扉(里親の家の扉や、施設の扉、母の面会に訪れる刑務所の扉)が印象的に映し出されていたので。
(original photo: pixabay)
最後に、字幕について
字幕に関しても、わかりにくい表現が気になりました。
①ポールがアストリッドに、「ゲイなの?」と聞き、アストリッドがそうだと認めるシーン。
施設で、男性と関わらないようにしているアストリッドに対して、同性愛者なのか確かめたくて聞いたポール。
異性として見てもらいたくなくて、アストリッドは肯定していました。
でも、日本では女性の同性愛者については、「ゲイ」という言葉をほとんど使わないので、不自然でした。😮
「ゲイなの?」よりも「女の子が好きなの?」が良いのではないかと思います。
その後、アストリッドが、「ゲイじゃないの」と告白する場面でも、「同性愛者じゃないの」の方が良いかと...
(original photo: Pexels)
②3人目の里親が、古着を売る屋台で、「屋台とガス代は、私もちだよ」と言うシーン。
アストリッドの持っていた服が売れた場合の、自分の取り分について、主張しているところです。
屋台の維持費が里親もち、というのはわかるけれど・・・。
「ガス」というと、ガスストーブでもあるのかと思ってしまいます。
でもこれは、屋台までの移動に使う車のガソリン代のことなんです。
「屋台とガソリン代は、私もちだよ」の方が、わかりやすいと思います。🙂
最後に
「実在の人物の話なのではないか!?」と思ってしまうぐらい、登場人物の感情が、リアルに描かれているストーリー。
女優陣の演技も、美しい映像も、素晴らしい映画でした。
それなので、なおさら、説明不足で曖昧な点が多いことは、もったいないように感じました。
(※2017年3月の記事を更新しました。😌)
(↑)原作・日本語版は、中古のみ。
(↓)原書です。
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